「優しい地獄」イリナ・グリゴレ
週の最後のニュースレターは、有料記事「小泉マンスリーレポート」の配信です。
今月のラインナップは……
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優しい地獄 / イリナ・グリゴレ🐴
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それから高橋悠治のバッハ☁
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たけのこの里って🌲
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雲の上の美術館+蜷川実花の日本刀🗡
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名画と暮らし🖼
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ウォーホルのアルバムジャケットから学ぶ🎨
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クッションカバー🏇
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他人の関係 / 金井克子💃
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今回は無料会員の方向けに、一部記事を抜粋してお届けします。
小泉チルドレンの皆さま(この勝手な名称は受け入れてもらえているのか?)にぜひ知ってもらいたい本のご紹介です。お楽しみください!
「優しい地獄」イリナ・グリゴレ🐴
最高!という言葉以外に思いつかない、イリナさんのエッセイ「優しい地獄」。
ぜひ皆さま、この◎小泉週報をお読みいただいたあとは、すぐに書店でお買いあげ、もしくは図書館へ足をお運びいただくと、素晴らしい週末をお過ごしいただけることをお約束いたします。
ねえ、なんてかわいい表紙なの……?
イリナ・グリゴレさんはルーマニアから来日し、現在は東北地方に住んでいるそう。帯に書いてあるように川端康成の「雪国」を読み、自分の身体に合う言葉はこれだと思い、日本語を習得したそうです。
正直に告白すると、帯の一文を目にしたとき母語マウントを取ってしまい、「いや、日本語って結構むずいよ……?大丈夫そ?」とか思っていたのですが、私たち以上に巧みな文章で、丁寧に強く組み立てられた文章表現に驚愕&反省。
日本の暮らし、ルーマニアの思い出、青春、家族、女性であること……。
ルーマニアの暮らしや食べ物を想像しながら文字を追うだけでもとても面白い読み物ですが、綴られる日本語のみずみずしさと美しさに心を打たれ、何度も読み返しては落涙のこの10月でした。
読み進めるうちに、もしかすると言葉というのは使うほどに鮮度が落ちて汚れてしまうのかもしれないと思った。いやだ、毎日新しい目で言葉を読み、考えたい。こなれた文章やエゴを練り込んだ文章を書くのはもうやめる。
仕事を終えると劇場かシネマテークに足を運んで、たくさんの演劇と映画を観た。自分の日常とのギャップが大きくて、喜びを感じるより恨みを感じることが多かった。上映後、一人で寂しくブカレストの中心部を歩いて、ホームレスの子供を徳から観察していた。
生活の苦しさや国家情勢や環境がまったく違うのに遠く離れた場所で、同じ空を見ていた気がする。東欧とアジアに住む少女たちは、まるで場違いなOASISの曲に励まされていた。
私もそうだった、私もその時そう言いたかった。十代の魂が救われる感覚。
彼女は映画監督を夢見ていて、夢破れてモヤモヤしながら日々を過ごしていたこと(私も同じく映画監督になりたかった。イリナさんがそこで出会った悲しく意地悪なひとたちが、私が日本の映画界隈で出会った人たちとまったく同じ人種であることに驚くのだった。こんなに世界が違うのに、意地悪な大人のパターンは一緒なんだね)、孤独、わからなさ、日々の疲れと挫折にかすむ未来……、自分を重ねながら読んだ。
そして、言葉がわからなければ理解できないし伝わらない。そんな当たり前ことを奇跡に感じるのでした。
私はイリナさんが見ている日本に住みたい。イリナさんが感じる言葉がもっとほしい。
今週はここまでです。
また11月にお会いできることを楽しみにしています。
小泉綾子(@ayathecat)
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