#050 💛映画は救ってくれない
おはようございます!土曜の朝の◎小泉週報です。
Meules, milieu du jour (1890) by Claude MONET 柔らかニットみたいな秋のモネ、推せる。
映画ライター 真魚八重子さんのエッセイ「心の壊し方日記」はショッキングな本でした。
真魚さんの名前は映画美学校の初等科に通っていた時、古澤健監督の授業でその名を知りました。
短くキリっとした冷たい印象のある文章がかっこよく、映画評という限られた小さなスペースの中で、映画史における作品の立ち位置や監督の作風、また後世に与えた影響などすべてを網羅したうえで、作品の見どころを簡潔にまとめていて、記事を読むたびに「職人技だなー」と唸らずにはいられません。
たとえばロバート・アルドリッチ監督特集号の記事の冒頭をお読みください。
ロバート・アルドリッチは男の映画を得意とした監督、という評価に異論はない。だがもっと詳細に、それは男同士が敵対し、または結託してある収束点にまで突き進む群像劇としての面白さであることは、強く訴えたい。アルドリッチが描いたのはヒーロー映画ではなく、様々なキャラクターに分裂して描かれた人間像だ。
どうでしょうか!
これから全ての映画評は、この『真魚式』に統一して書いてくれ!と思うほど。アルドリッチを知る人もそうでない人にも等しくわかる文章です。
アルドリッチの「何がジェーンに起こったか?」は私の生涯ベスト10のお気に入り映画。”半身不随になった元映画スターの姉を、元人気子役だった妹が家に監禁するサイコホラー”(wikipediaより)真魚さんはこの映画を「男性映画とは趣が異なるように見えるが、人間の闇を拡大して描いているという部分で他の映画と共通している」と書いています。
真魚さんはミステリアスな存在ですが、このエッセイでは、兄の死、認知症の母親と立ち向かう遺産問題、実家整理の壮絶な出来事、ネット炎上、克明な自殺未遂の記録などが、いつもの淡々とした文章で、しかし赤裸々に書かれています。
タイトルもインターネット黎明期のブログタイトルを思わせる感じでドキッとして、駅前の本屋の開店が待ちきれず、深夜にkindleで購入。
🎬映画は救ってくれない?
膨大な映画の知識を持ち、映画評論界でその名を知らぬ人のいない真魚さんのエッセイなので、ついつい「そんな苦しみの中でこの映画に救われました」という一文を期待し、